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喫煙による健康問題の懸念が広く社会で共有され、分煙習慣が広く定着してきました。
あわせて繰り返す煙草税の上昇に伴ってわが国での喫煙率は年々低下をつづけています。
JTの全国喫煙者率調査によると成人喫煙率は、男性では昭和40年代には80%近くの数字で推移していましたが、平成28年には男性の喫煙率は30%を切るにまでいたっています。

数十年の間にこれほど煙草の喫煙率の低下をもたらしたことの根本には、もちろん価格の上昇などの経済的要因も影響しているものの、依存症やニコチン中毒、肺ガンを初めとして人体への有害性についての認識が社会的に広く共有されてきたことが根底に存在することは間違いありません。
そこで改めて煙草の害について考えてみましょう。

煙草の起源と歴史について

アメリカのイメージ

煙草はナス科のニコチアナ属の植物で、現在世界中で広く栽培されているのは、ニコチアナ・タバカムという種類です。
現在の煙草の原種は中南米のボリビアやアルゼンチンに広がるアンデス山中に分布していたニコチアナ・トメントシフォルミスとニコチアナ・シルベストリスニコが交雑した種類とされています。

煙草はもともとはヨーロッパに伝来される以前から古代アメリカで吸われてきたという歴史を持っています。
当時は宗教的行事に用いられることが多く、古代マヤ族のでは神への供物として使用されており、シャーマンが乾燥した野生の煙草の葉を火にくべて、その煙を吸引していたのが起源と考えられています。

後には煙草の持つ鎮静作用が知れ渡り、次第に一般人にも喫煙習慣が広がり、広く中南米地域に伝播していったと考えられています。
そして喫煙方法も民族毎に異なった発展をとげ、竹や骨を利用して吸ったりあるいは葉を巻いて吸うなどの、現在の紙タバコの起源や原型とも言うべきものが形作られたようです。

煙草が西洋に広まったきっかけ

煙草が西洋に広まるきっかけとなったのは、1492年にコロンブスがアメリカ大陸を発見したのを契機に、現地人との接触するなかで煙草を入手し、スペインに持ち帰ったことによると考えられています。
喫煙習慣はスペインを起点にヨーロッパ全体に伝わり当初は貴族の間で珍重されていました。

その後は次第にヨーロッパでも煙草の栽培が行われるようになります。
19世紀半ば以降は産業革命による紙タバコの大量生産が可能になったことや、イギリスでマッチが発明されてことをきっかけにして、一般大衆の間にも急速に煙草が普及してきました。

日本にも煙草がやってきた!

日本に煙草が歴史的に登場するのは1543年の鉄砲の伝来と共に、ポルトガル人により煙草の起源となる品が伝来された時といわれています。
日本に伝来された当初は風紀の乱れや、失火の原因になること、米や麦の栽培面積の減少などを懸念した幕府により禁じられていました。
歴史的には慶長年間(1596年ごろ)には長崎や指宿ではすでに栽培されたことが知られており、幕府による度重なる禁令にも関わらず庶民の間で広く喫煙習慣が普及していったようです。

大衆に普及したことにより幕府も次第に容認する政策へと転換し、庶民を中心に身近な嗜好品として親しまれていました。
江戸時代の喫煙スタイルの起源は、荒く刻んだ葉をキセルで吸う方法が親しまれてきましたが、やがてやわらかな味わいの細かく葉を刻んでキセルに乗せるスタイルが定着していきました。

歴史が下り明治になるとたばこ税則が制定され、煙草の栽培製造販売も本格化し、喫煙習慣も更なる拡大を見せるようになりました。
歴史的にみれば煙草は当初の起源としては薬品として使用されたこともありました。
このように薬品や庶民の嗜好品として長い歴史を持ちますが、煙草の人体への有害性が明らかになったのは、ここ数十年のことです。

ニコチン依存症という病気の症状や治療法

イライラする男性

喫煙習慣を継続していると様々な健康への害があることが知られてしますが、典型的な病気としてはニコチン依存症があげられます。
ニコチン依存症か否かを判定する方法としては、特徴的な症状があるとされているのである程度はセルフチェックすることが可能です。

ニコチン依存症による禁断症状が典型的とされています。
特に自分でも吸う本数をコントロールできない、吸わないまま数時間経過すると煙草が吸いたくてイライラする、集中力が欠けるなどは禁断症状の典型といえます。
このような精神的な症状の他にも、手が震える、頭痛がする、脈が遅くなる、胃がむかつくなどの身体的症状が伴うこともしばしばあります。
逆に吸う本数を減らすと、食欲が増して体重が増加するなどの症状が見られることもあります。

医学的にはニコチン依存症は精神疾患とされていますが、精神的に煙草をやめることが出来ずにイライラするなどの気分的な症状だけでなく、手の震えや脈拍の乱れなど身体的な症状も同時に出ることがあるという特徴があります。

それではどうしてニコチン依存症になってしまうのでしょうか。

ニコチン依存症の原因は脳の勘違い!?

そのメカニズムは一言で言うと「脳の勘違い」にあるといえます。
煙草に含まれるニコチンの粒子は、脳内の神経伝達物質に類似した構造を持っています。
神経伝達物質とは脳内の神経細胞の電気信号をやり取りし、人体の正常な脳機能を保持する物質のことです。

喫煙するとニコチンは肺から血管に入り、心臓のポンプ機能により脳内に運搬されます。
この際に脳細胞はニコチンを神経伝達物質と勘違いしてしまい、細胞内に取り込んでしまいます。
ニコチンを受け入れた細胞はドーパミンを大量に放出することになります。
ドーパミンといえば意欲やモチベーションを高めたり、快楽や高揚感を与えることで有名な物質です。
そこで煙草を吸うと快感を覚えるため、もう一度吸いたくなります。
これがニコチン依存症に陥るメカニズムです。

ニコチン依存症について本人に病識が低いことが治療のネックになることがあります。
多くの禁断症状は煙草を「一服する」ことで解消されるからです。
そこで家族などの周囲の人間が積極的に介入して治療を受けるようにサポートすることも重要になります。

ニコチン依存症の治療について

ニコチン依存症の治療法は主に行動療法と薬物療法により実施されています。
行動療法とは、幾つかのバリエーションがありますが、喫煙者の認識に変化を与えて喫煙習慣を改めさせることを目的とする治療法です。
医師によるカウンセリングやニコチン依存症患者同士のグループディスカッションなどが行われています。

薬物療法とはニコチン不足による不快な症状を抑えるニコチン置換薬などを投与する治療法です。
経皮吸収パッチなどのタイプの薬も使用されますが、主にニコチンによる作用を弱めて喫煙習慣の矯正を図ることを目的にしています。

行動療法と薬物療法は単独で行われる治療法と言うよりは、相互の治療法のメリットを活かして併用されることが医療現場では多いと言えます。

煙草はガンになる?含まれる発がん性物質一覧

たばこを折る医師

煙草による健康被害で最も懸念されるのは、発がん性物質を大量に含んでいることから肺がんを初めとしたガンの原因になっているという点です。
一説によると煙草には4000種類に登る有害物質が含まれ、発がん性を疑われる物質も含まれています。
しかし健康に悪いと漠然とは分かっていても、具体的に細胞レベルでどのような変異が生じてガン発生につながるのかは、案外知られていません。
そこで煙草に含まれる発がん性物質のいくつか、代表的な物質とその特性を考察していきましょう。

煙草に含まれる人体への発がん性の危険を有していると考えられている発がん性物質は以下の数種類と見られています。
ベンゼン、カドミウム、2-アミノナフタレン、ニッケル、クロム、砒素、4-アミノビフェニル、NNK、NNNと言われています。
そこで代表的名ベンゼン、カドミウム、ニッケル、クロムの影響について考察してみましょう。

ベンゼン
ベンゼンは世界保健期間(WHO)の関連組織である国際ガン研究機関(IARC)が発表している発がん性物質リストにおいても、発がん性がある、とされている物質です。
ベンゼンが細胞をガン化させる仕組みとしては、ベンゼンから生成されるフェニルラジカルが細胞のDNAに反応することが関係しているとされています。
フェニルラジカルにより活性酸素が生成されDNAがダメージを被り、DNAの修復に失敗してガン化が生じると推測されています。
カドミウム
カドミウムもIARCの発がん性物質のグループ1に分類され発がん性があるとされています。
カドミウムは大量に摂取すると急性の中毒症状を引き起こしますが、喫煙によるカドミウムへの少量の慢性暴露によっても発ガン性を有するとされており肺ガンのリスクを上昇させるとされています。
特にカドミウムは腎臓に蓄積される傾向が強いので腎臓ガンや前立腺がんなどを引き起こす可能性も指摘されています。
ニッケル
ニッケルは貨幣や合金にも使用される金属ですが、煙草にも含まれています。
ニッケルの発ガン性の関連が報告されているのは主にニッケル精錬工場に従事する労働者において肺ガンや鼻腔ガンの発症が頻発したことから発ガン性が高いとされています。
ニッケルは慢性的に暴露すると遺伝子にダメージを与えるとの報告もされており、煙草に含まれるニッケルについても長時間体内で蓄積されることで発ガンのリスクが高まると考えられています。
クロム
金属メッキなどに多用されるクロムですが、有害性を持つ重金属として有名です。
クロムは高い酸化作用をもつことから、皮膚や粘膜に付着した状態では活性酸素により炎症や腫瘍を引き起こすとされています。
煙草に含まれる程度の少量のクロムであっても、慢性的にクロムに暴露され続ける結果、細胞の変性を生じさせ肺がんなどを引き起こすリスクが高まります。
このように煙草にはたとえ少量ではあっても、長期間習慣化していると発ガンにつながる化学物質が含まれているのはたしかです。

煙草を吸うと体臭まで臭くなる原因

非喫煙者にとっては喫煙者が周囲に放出している、「タバコのにおい」は不快なだけでなく、健康志向の高まりによって一層、印象は悪くなっているといえます。
ところが喫煙する人は体臭まで臭くなることがあります。
そのため煙草の煙のニオイばかりに気が向いていると、思いもしない体臭が悪化していることもあります。
そこで煙草と体臭の問題について、考えてみましょう。

喫煙が原因の体臭には、煙の強い臭いの他にも、喫煙習慣により体内環境が悪化することにより引き起こされる臭いも含まれます。
まず煙には刺激臭の元になるアンモニアや酢酸などの物質も含まれています。
これらの成分が口や肺の奥深く、頭髪や服装などあらゆる部位に付着して体臭を悪化させることになります。
またニコチンには脳内の体温調節中枢を刺激する作用を持っているので、通常よりも発汗量が増加していることがあり、汗により体臭が強くなることがあります。

ミドル脂臭を放つ?

それでは喫煙習慣による体内環境の悪化による体臭の原因としては、どのようなものが考えられるのでしょうか。
この点、血行不良を原因とする悪臭を指摘することができます。
ニコチンは体内の細胞に取り入れられるときに血管を収縮させる働きがあるので血行不良状態が引き起こされます。
血行不良になると、汗腺や皮膚の活性が失われ肌荒れや、乾燥肌などが見られるようになります。
その結果、頭皮を初めとした皮膚の常在菌のバランスが崩れ「ミドル脂臭」などの独特の体臭を放つようになります。

皮脂の増加も関係している?

喫煙と皮脂の増加も体内環境の変化による体臭の問題をもたらします。
煙草を吸うと自律神経のひとつである交感神経が活性化され、抗ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌量が増加します。
コルチゾールはアポクリン汗腺に皮脂の増加を指令するので、皮脂の分泌量が増加します。
同時に皮脂の分泌を抑制するビタミンCが大量に消費されるので、皮脂の増加のコントロールが効かなくなります。
皮脂をえさにする雑菌が大量に繁殖するので、その過程でニオイ物質が生成されるばかりでなく、皮脂自体が酸化する過程でもニオイを放出します。
その結果、加齢臭がさらに悪化することになります。

肝臓と体臭の関係

また肝臓の機能低下が体臭の悪化につながっている場合もあります。
体内に入ったニコチンは肝臓に取り込まれ分解解毒されることになりますが、ヘビースモーカーの場合には常に肝臓の解毒作用が働き続けることになります。
慢性的に肝機能に負担がかかった状態になっているため、肝機能は低下していきます。
肝臓ではアンモニアなどの有害物質を分解するという重要な機能を持っています。
ところが、肝機能が低下すると本来は分解されるはずの、アンモニアなどの有害物質が処理しきれないまま体内に残り続けると、最終的には汗や呼気に排出されてしまい、体臭や口臭の悪化としてあらわれてきます。

このように煙草を吸うとニコチン依存症や肺ガンなどの健康被害だけでなく、体臭を悪化させる要因にもなっています。